「“モノがない部屋”で教えてもらった、やさしい子育てのヒント」

母のつぶやき

小さな出会いが、私の考え方を変えた

長男がまだ1歳くらいで、よちよち歩きを始めたばかりのころ。
私は近所をゆっくり散歩してた。

そのとき、通りがかりの年配の女性に話しかけられて、
「立ち話もなんだから」と、家に招いてくれた。

一軒家のそのお宅に入って、驚いた。
玄関から見える部屋に、ほとんど何もなかった。

テーブルとテレビ台、そしてテレビだけ。
雑貨も、カレンダーも、収納棚も見当たらない。
一目で「モノが少ない」とわかる空間だった。

「モノ少ないですね」と言うと、
「独り身だからね。どんどん片付けてるんだよ」
と笑顔で答えてくれた。

◆ゆで卵と、心の豊かさ

「出してあげるもの、何にもないけど、ゆで卵なら作ったろ」
そう言って、キッチンで卵をゆでてくれたその方。

本当に何もない部屋、
だけど、そこには優しさが満ちてた。

「モノが少ないほうが、小さい子がいてもいいよ。
ケガのリスクもないし、触られて困るものもない。
自由に遊ばせてあげられるでしょ」

その言葉が、胸に残った。

「赤ちゃんがいるから危ないものは片付けなきゃ」
「でも家の中はモノであふれていて、どうしたらいいの?」

そんなふうに悩んでた私にとって、
「最初からモノがなければいい」
という考え方は、まさに目からウロコだった。

◆10年後、思い出す言葉

あれから10年。
長男には発達障害の診断があり、
私は子育てを一から学び直すような日々を送ってる。

その中で知ったのが、
「視界に入るものを減らすと、刺激が少なくなり、集中しやすくなる」
ということ。

部屋がすっきりしていると、子どもも落ち着きやすい。

それを知って、ミニマリストの動画を見始めたとき、
ふと、あのときのおばあちゃんのことを思い出した。

あの人は、自分のためだけじゃなかったんだな。
誰が来ても、子どもが来ても、
みんながのびのび過ごせるように、自然と整えていたんだな。

◆「終活」という優しさ

10年前にもらった、あのゆで卵のように。
必要最低限の中に、あふれる優しさが宿るような。
そんなふうに生きていけたらと思ってる。

子どもたちが巣立ったあと、
私のモノなんて、きっと彼らには必要ないかもしれない。

男の子だし、母の持ち物にそこまで執着しないかなと思う。
だからこそ、今から少しずつ「終活」を意識し始めてる。

できるだけ身軽に。
本当に大切なものだけを、丁寧に残していく。

未来の自分も、まわりの人も、
少しでも生きやすくなりますように。

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